小山 実 稚 恵 夫(おやま みちえお)は、日本の電子工学分野において黎明期から活躍した技術者であり、戦後日本の産業発展に多大な貢献をした人物です。1932年に東京で生まれ、1955年に東京工業大学を卒業後、民間企業で半導体技術の研究開発に従事しました。
特に特筆すべきは1964年に開発した「高周波用トランジスタの低雑音化技術」で、これが日本のテレビ放送機器や通信衛星の性能向上に決定的な役割を果たしました。当時アメリカが主流だったゲルマニウム素材に代わり、シリコンを用いた独自の製造プロセスを確立した点が特徴で、この技術は後に「OYAMAプロセス」として国際特許を取得しています。
1970年代には省エネルギー技術の開発に転じ、世界初のマイクロプロセッサ制御型電力制御システムを開発。この技術は工場の生産ライン最適化に応用され、日本の製造業の国際競争力強化に寄与しました。1988年に紫綬褒章を受章後も、後進の指導に力を注ぎ、2010年までに37件の特許を共同出願しています。
近年ではAIと伝統技術の融合を提唱するなど、常に先端技術と社会実装のバランスを重視する姿勢が特徴です。現在も技術顧問として活動しながら、「技術者倫理」に関する著書を3冊執筆するなど、技術と人文科学の架け橋となる活動を続けています。