小和田邸の間取りは、伝統的日本建築の粋を現代に伝える貴重な事例として注目を集めています。明治期に建てられたこの邸宅は、武家屋敷の様式を基調としつつ、近代的な生活様式を取り入れた過渡期的な特徴を備えています。
主屋の基本構造は「L字型配置」が採用され、接客空間と家族の居住空間を明確に分離。玄関を入ると広縁が南北に伸び、座敷群が連続する「雁行構造」によって自然光を最大限に採り入れる設計思想が感じられます。特に15畳の大広間には床の間と付書院を配し、格式高い雰囲気を醸し出しています。
特徴的なのは「三つの庭」を意識した空間構成です。表庭は儀礼的な空間として松を配した枯山水、中庭には回遊式庭園、裏庭には実用性を兼ねた茶庭が配置され、各部屋から異なる庭景観を楽しめるよう計算されています。廊下の屈折角度45度という細やかな設計は、視線誘導とプライバシー保護を両立させた職人の知恵が光ります。
台所部分には当時最新の煉瓦造りを採用し、土間空間を広く取ることで使用人の動線を確保。2階建て部分には洋風書斎が設けられ、ガラス窓や暖炉など西洋の技術を積極的に取り入れた痕跡が見て取れます。伝統と革新が融合した空間構成は、現代の住宅設計にも多くの示唆を与えるでしょう。