無期懲役制度の基礎知識
日本の刑事法における「無期懲役」は、殺人や強盗致死などの重大犯罪に科される刑罰です。死刑に次ぐ重刑と位置付けられ、刑期の終了日が定められない点が特徴です。ただし「終身刑」とは異なり、法律上は10年経過後から仮釈放の可能性が生じます。
制度の仕組みと実態
- 収監施設:刑事施設(刑務所)での終身収容が原則
- 仮釈放条件:服役10年後から審査対象(実際の許可は平均34年後)
- 再犯率:2020年法務省統計では仮釈放者の再犯率0.8%
死刑との比較
比較項目 | 無期懲役 | 死刑 |
---|---|---|
科刑件数(2022年) | 15件 | 3件 |
平均年齢 | 48.3歳 | 51.6歳 |
再審可能性 | 常に存在 | 執行後不可 |
近年の法改正動向
2013年改正刑法で「特定無期刑」が導入され、被害者2名以上の事件では仮釈放審査開始時期が20年に延長されました。これはオウム真理教事件を契機とした改正で、重大犯罪者に対する厳罰化の流れを示しています。
制度的課題
「高齢受刑者の医療コスト増大」(刑事施設関係者)
「被害者家族の精神的負担」(犯罪被害者支援団体)
国際比較と人権議論
欧州人権裁判所は終身刑を「非人道的扱い」と判断する事例がありますが、日本政府は「改善更生の機会を保障」と反論。2021年国連拷問禁止委員会は無期懲役受刑者の処遇改善を勧告しました。
今後は受刑者の社会復帰プログラム拡充と、被害者支援制度のバランスが焦点となります。刑事政策の根幹に関わる制度だけに、人権尊重と社会防衛の両立が求められる課題です。