「着衣性交列伝」は人類の性文化史に連なる奥深いテーマを包含する。衣服という文明の鎧を纏ったまま交わる行為は、古代メソポタミアの神殿祭祀から現代のフェティッシュ文化まで、常に人間の欲望と倫理の交差点に位置してきた。

12世紀プロヴァンスの吟遊詩人たちは絹の袖越しに触れ合う官能を詩に刻み、江戸の浮世絵師は帯解きの瞬間を永遠化した。ヴィクトリア朝英国ではクリノリン・スカートの下で交錯する足首が情熱の象徴となり、戦後日本の学生運動世代はジーンズを穿いたままの密会で既成概念に抗った。

現代心理学は「布地の摩擦抵抗が性感を増幅する」と分析し、ファッション産業は意図的に中途半端な着衣率を商品化する。SNS時代の仮想空間ではアバターの衣服が新たなフェティシズムの対象となりつつある。

衣服は常に人間の第二皮膚であり、社会規範と個人の欲望の境界線である。着衣性交の奥に潜むのは、文明が作り出した禁忌と、それを破ろうとする人間の根源的な衝動のせめぎ合いに他ならない。