張琴松の芸術世界とその軌跡
台湾工芸界の至宝・張琴松(1935-2010)は、伝統木彫刻技術の継承者として国際的に高い評価を受けた芸術家です。福建省漳州出身の父を持ち、台湾雲林県で生まれた張は、15歳で木彫りの世界に入門。仏像彫刻を起点に、60年以上にわたり台湾伝統工芸の真髄を追求し続けました。
技術革新と伝統の融合
張琴松の最大の功績は、中国伝統の透かし彫り技法「鏤空彫刻」を現代アートに昇華させた点にあります。特に樟脳材を活用した立体彫刻では、0.1mm単位の極薄加工と複雑な層構造を特徴とし、光と影が織りなす幻想的な作品群は「木のレース細工」と称賛されました。
主な受賞歴
- 1987年 台湾工芸品展 最高栄誉賞
- 1993年 アジア工芸ビエンナーレ 金賞
- 2001年 重要無形文化財保持者認定
次世代への継承
晩年は雲林科技大学で後進の指導に尽力し、デジタル加工技術と伝統技法の融合研究を推進。2019年には台北市立美術館で大規模な回顧展が開催され、延べ10万人以上の来場者を記録するなど、その芸術的遺産は今も高い注目を集め続けています。
「木は生きている。彫刻家は自然の声を形にする媒介者に過ぎない」
– 張琴松 2005年インタビューより